未払い残業代請求のポイント
①未払い残業代請求には時効期間がある
働いた分の対価はきちんと貰おう!
残業代等の賃金は、労働基準法第115条で、3年間請求を行わない場合、時効によって消滅すると規定されています。そのため、さかのぼって2年分までの未払い残業代を請求し取り戻すことが可能です。
時効というのは、一定期間の経過によって、請求出来るものが請求できなくなってしまうという制度ですが、給料の場合、「時効期間は法律で3年」と法律で定められています。
支払い日から2年経過すると時効にかかってしまいますので、退職後に請求するという場合は、時間が経過すればするほど請求できる金額は減ってしまいます。
②労働時間の定義
より多く回収するポイントは、「労働時間」の立証
労働基準法では、皆さんの労働時間を、1日、8時間以内、1週間で40時間以内と定めています。
これを法定労働時間と言いますが、この法定労働時間を超える労働のことを時間外労働と呼びます。
労働時間となるかどうかの判断は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」かどうかで決まってきます。
法律上、時間外労働に対しては、所定賃金を一定の割合で乗じた、割増賃金を必ず支払わなければならないとされています。この、時間外労働に対して支払われる割増賃金が、一般的に残業代とか残業手当と言います。
日本の法律では、長時間労働を抑制して、皆さんが強制的に長時間労働を強いられるのを防止しようとしているにもかかわらず、長時間労働や残業代未払いは年々増加傾向にあり、近年、ブラック企業が問題となっています。
例えばですが、朝礼や掃除のために、始業時間よりも早く来ることが当たり前になっている場合は、これも労働時間とみなすことができます。また終業時間後の後片付けの時間も労働時間となります。
そもそも残業代の未払いとは、会社が従業員に対して負う賃金支払い義務を怠る行為であり、民事上の責任が生じることは当然ですが、悪質な場合には刑事上の責任も追求できる可能性があります。
会社に対して、残業代を請求するのは、気がひけるなと思うかもしれませんが、もらって当たり前です。残業代は、日々時効によって請求できなくなりますので、未払い残業代請求をお考えの方は、お早めにご相談ください。
③休日出勤について
プライベートがまったくないという方
労働基準法では、使用者は労働者に対して週に最低1回以上の休日を与えなければならないと定めています。
必ず与えられなければならない週1回以上の休日のことを「法定休日」と呼びます。
法定休日に出勤し労働した場合、35%以上の割増賃金を支払わなくてはなりません。
④残業代請求に必要な証拠
証拠はしっかり集めよう
残業代請求をして、会社から回収する際に一番重要なものは、ズバリ「労働時間が分かる証拠」です。
他にも細かな証拠は必要になりますが、回収金額に大きな差が出てくるのは、やはり「実際に働いた時間」を会社に対して提示できるかどうかにかかってきます。なぜなら、交渉の段階で支払われず裁判まで行った場合、労働時間を立証するのは労働者側になるためです。
従業員の方々が残業時間を一日ごとに証明する必要があります。記憶だけで「およそこれくらいの時間働いた」といって請求するわけにはいかないのです。せっかく毎日長時間労働をしているにもかかわらず、請求できないとなると、腑に落ちませんので、労働時間の分かるものを用意しましょう。
会社でタイムカードを押していないとか、そもそもタイムカード自体が存在しない、直行直帰だから労働時間が分からないという方からもたくさん相談いただいてます。
そのような状況の方は、
①ノートや手帳に手書きで記載した、勤務時間の分かるメモ
②出勤、退勤の際にスマホで撮った写真や労働時間が分かる記録
③メールの送受信履歴(社長、取引先、従業員、同僚、友人、交際相手、親族)
④社内で提出している業務日報やメール履歴
⑤会社PCのログイン時刻とログオフ時刻等
でも構いませんので、なにか時間の分かるものをご用意してください。
出勤時間、退勤時間、仕事内容、残業時の仕事内容、上司の指示内容、その日の出来事を日々出来るだけ細かく記録メモを取ることが大切です。毎日の仕事内容や時間が、細かく正確に書いてあればあるほど信用性が高まります。
残業代請求する際は、このような記録やメモ等によって立証していくことになります。証拠の集め方が分からない場合は、弁護士がアドバイスいたしますので、お気軽にご相談ください。
万が一、タイムカード(勤務時間)の記録がない場合でも、未払い残業代の請求をすることが可能です。なぜかというと、会社は、勤務記録や業務日報、賃金台帳・従業員の労働に関する書類を3年間保存しなければならないと法律に定められていています。そのため、皆さんのお手元にはなくても、会社に保管してある場合もございます。会社に対し、資料を開示させたうえで、未払い残業代を計算することもできます。
ただし、会社が証拠書類を開示しない場合は、法的手続きをし開示を求めます。具体的には、裁判を起こして、強制的に証拠の保全を図る手続き(裁判所から命令を出してもらう)を利用することも考えられますので、あきらめずに弁護士にご相談いただければと思います。
会社は、勤務記録を改ざんしたり、証拠を隠滅する可能性もありますので、証拠が多いほど有利に進み、回収金額にも差が出てきます。残業代請求に役立ちそうな資料やデータがあれば、とにかく保管しておくことをお勧めします。
まったく証拠がない、証拠を集められそうにない場合、個別にアドバイスさせていただきますので、無料相談の予約にお進みください。
自分だけでは、対処しきれないこともたくさんある事でしょう。そんな時は、依頼するしないは別として、現在直面している問題に対して、どのような対応が適切なのかを一緒に考えてみましょう。
⑤よくある会社の反論
職務手当、みなし残業制、裁量労働制
未払い残業代請求をした時によくある会社側の主張の一つに、
「管理職だから残業代は払わない」というものがあります。
確かに、法律上、管理監督者については、労働時間等に関する規制は及ばず、残業代を支払う必要はないことになっています。ただし、どのような場合に、管理監督者にあたるのかどうかです。
裁判所の判断として、管理監督者とは「労働条件の決定、その他労務管理につき雇用主と一体的な立場にあるもの」としています。
・雇用主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を有するか
・自己の出退勤について、自ら決定しうる権限を有するか
・管理職手当等の特別手当が支給され、待遇において時間外手当及び休日手当が支給されないことを十分に補っているかなどを実態に照らして判断すべきと述べました。
過去の判例にもあるように、店長、課長、係長、主任、マネージャー職について、残業代の支払いを命じた判決が多 くあります。ニュースでも度々取り上げられ、このような、名ばかり管理職、の問題が世間に知られるようになりました。いまだに、管理職と残業代の関係について、誤解している会社がたくさんあります。
残業代の計算
(1か月の給与/1か月の平均所定労働時間)×割増率×残業時間
(365日―会社のお休み)×1日の所定労働時間÷12か月=平均所定労働時間
【例】
1日の所定労働時間が8時間、週40時間勤務する会社だと仮定。
365日÷7日×40時間÷12か月=約173.8時間
これが1か月の平均所定労働時間となります。
割増率
法定労働時間を超えた場合:25%増
休日に労働した場合:35%増
深夜労働した場合:25%増(22時〜5時)
深夜労働かつ法定労働時間を超えた場合:50%増(25%+25%)
休日かつ深夜労働した場合:60%増(35%+25%)
60時間を超える残業をした場合:50%増(中小企業は適用除外)
【例】
1か月の給料:35万円
1か月の平均所定労働時間:173時間(上記の計算結果)
平均勤務時間:平日9時~24時、休日(週休2日に1日の休日)10時~17時(休憩1時間とする)
平日と休日で分けて計算。
平日:18時~24時の6時間が残業時間と見ることができ、22時~24時の2時間は深夜労働扱い。
(35万÷173.8時間)×1.25×6時間+(35万÷173.8時間)×0.25×2時間×=16,110円/日
休日:深夜労働なし
(35万÷173.8時間)×6時間×1.35=16,311円/日
これらを合わせて1月当たりの残業代を計算すると、16,110円×22日+16,311円×4日=419,664円
結果
あくまで単純計算ですが、1か月当たり約42万円以上が残業代として支給されなくてはならない計算になります。
サブロク協定=36協定で定められている残業の上限時間を超えて働かせた場合は罰則があり、会社代表者には「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。時間外労働について割増賃金を支払う義務があることは当然です。