外資系企業への残業代請求
よくある問題点① 外資系企業の未払い残業代
近年では、外資系企業への残業代請求も増えてきています。
外資系企業の多くが導入している年俸制の場合、残業代も含まれているのか。
答えとしては「いいえ、それは間違い」です。
基本的に、残業が発生した場合は年俸額とは別に残業代が支払われます。
ただし、「一ヶ月あたり80時間の時間外手当を含む」という場合は例外です。
上記のように支払われている場合は、80時間分の残業代が含まれているということになりますが、80時間を超える残業をしている場合は支払いが必要になります。
日本の労働基準法第37 条は、原則1日8時間・週40時間を超える労働に対して、25%の割増賃金の支払いを義務づけています。
残業代を支払わなくてもよいとされるのは、管理監督者に対してのみです。年俸制であっても、残業代の考え方は同じになります。
年俸制導入について、あらかじめ残業代を年俸に含めておくことが一切認められないわけではありません。
ただし、それにはいくつかの条件があります。下記にて記載いたしましたのでご確認ください。
年俸にあらかじめ残業代を含めるには、次の条件を満たす場合のみです。
年俸に残業代が含まれていることが労働契約の内容から明らかであることと、会社側が明確にしていること。
もしも明確な規定や説明がないときは、「残業代の含まれない年俸制」と考えられるので、残業代に対する割増賃金を請求できることになります。
残業代部分と所定労働時間に対する基本給部分とを区別できること。
年俸額のうち残業代の部分が区別されその額が明確になっている必要があります。
この区別が不明確な支払方法は違法とされていますので、実際の残業代部分を会社に請求することが可能です。
このように、外資系企業の年俸制のような給与体系の場合、残業代は発生しないと考えている方が多数です。
残業代は給与の総額に含まれており、それを分割で受け取っていると解釈していることがありますが、年俸制を採用している場合でも残業代は支給されなくてはなりません。
業績が良い場合、インセンティブが支給されるとはいえ 、何十時間働いても残業代が支給されないということはありません。
「残業代はボーナスに含まれている」「そもそも年棒に残業代が含まれている」というような考えは大きな間違いであり、働いた分の残業代を貰うことは労働者の正当な権利といえます。
よくある問題点 ②雇用契約
雇用契約締結の際に、「双方いかなる理由に関わらず、常時、雇用契約を解消できる」と規定されている場合があります。
しかし、この解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と認められなければなりません。
日本で活動している以上、これは日本の労働契約法第16条が適用されることとなり、解雇無効の判断となります。
一方で、労働関係法により 、特に規制されていない労働契約の内容に関して、どちらの国の法律が適用されるかは、強行法規や公序に違反しない限り、当事者の意思に委ねられることもあります。
以上のように、外資系企業との労働問題であろうが、原則として日本の労働法により守られています。
ただし、交渉段階で話がまとまらず裁判になった場合、外資系企業では雇用条件につき、日本の同業他社とは異なった扱いをされることもあります。
例として、労働者が雇用主から労働時間の管理を受けておらず、自己の裁量で働いていたという事案では、東京地裁が請求を棄却する判断を下した例があります。
毎月支給されている基本給に時間外勤務手当が含まれているとの有効な 合意があると判断しました。
裁判所の判断が全てに影響するかは、事案によって様々ですので、外資系企業の残業代請求に迷われましたら、無料相談にてアドバイスさせていただきます。
よくある問題点 ③退職勧奨
外資系企業で働く方々にとって、一番の不安は雇用に対する「安定性」が日経企業に比べ低いという点だと考えられます。
下記のようなケースで雇用契約が解消されるリスクがあります。
・成果が出せず解雇
・日本市場から撤退する
・業績悪化によるリストラ
特に解雇の場合、日本ほど制限も厳しくありませんので、日常的に行われています。
成果が出せずにレイオフ、従業員の努力や会社の業績とは無関係で解雇 されるケースもよくあります。
また、日本市場からの撤退や、業績悪化による支社の人員整理も頻繁に行われております。
・人材の入れ替わりが激しく、流動性が高いのも外資系企業の特徴です。
そのため、上司や部下が次々と入れ替わることも珍しくありません。
外資系企業の日本法人に就職・転職する場合には、マネジメントポジションは本国から出向してきている社員で占められており 、現地採用である日本人はいくら頑張っても出世ができないという話も良く聞きます。
・長時間労働が必要になることも
残業代が出ないから残業はしない、という文化がある企業も多いのですが、一方で成果は求められる環境ですので、成果を出すためには長時間労働も厭わずエンドレスで働き続けなければいけない、という企業も存在しています。ヨーロッパ系の企業ではあまり見かけませんが、米系のコンサルティング会社や金融機関、IT企業などの場合、昼夜を問わず働き続ける激務な職場も多 くあるようです。
外資系企業では、能力が劣る本国の労働者と同様に、日本法人における、能力の劣る労働者を退職させたいと考えています。
ボスが不要と判断した労働者を退職させることは、当然であるという風潮があります。
しかし、いくら外資系企業であっても、日本法人における労働者には、日本の法律である労働契約法が適用されます。
労働契約法16条では、「客観的に合理的な理由と解雇が社会通念上相当であること」厳しい要件を充たさない解雇は、「無効」であると定めています。
日本国内では、解雇が有効になることは、通常は極めて困難です。外資系企業では、ありえない条件を提案し、退職勧奨する例が見られます。
悪質な外資系では、「退職勧奨」を継続すれば、日本人の労働者はいずれ退職するだろうと考えておりますが、日本の法律の元では、労働者が強い立場になります。
退職勧奨をされたら、退職を断るべき。
退職を断れば、退職の交換条件として、会社が特別退職金などの提案をしてくる可能性が出てきます。
ポイントとしては、理由を文書で回答するように求めることが良いです。
会社の回答次第では、その理由が不合理または不当であったりする可能性があり 、理由や不当な理由を文書で示した場合は、交渉を有利に進めることができます。
特別退職金の金額が納得できない場合には、やはり退職を拒否するべきです。
この段階になって退職しない場合は、懲戒処分や降格、減給などの圧力をかける可能性があります。
退職に追い込むために、違法な圧力をかけてきた場合には、すぐに弁護士に交渉を依頼するべきでしょう。相談は早ければ早いほどよいです。
よくある問題点 ④証拠はどう集めるか
タイムカードや出勤簿が無い場合、手書きのメモやメールの送受信履歴も証拠となります。
外資系企業や年俸制を採用している企業の場合、出勤、退勤の時刻を記録していない会社があり、残業時間を証明できないこともあります。
そのような場合、業務日報の写しやメールの送受信履歴、携帯やスマホで時刻を撮したスクリーンショットなどを提示する事で、残業時間を証明する事が出来ることもあります。そうした証拠は会社側と交渉する際、交渉材料として非常に重要な役割を果たします。
以上のように、日本で営業活動をしている日本企業が、残業代を支払い始めているにも関わらず、外資系企業だからと言って決して許されることはありません。
外資系企業こそ日本の法律を守らねば罰せられる時代になってきました。
皆さんが働いているのは、日本なのですから、日本の法律に従うのが当たり前なのです。