昨年度の「サービス残業代」100億円について
本日は「残業代の支払い金額」と「36協定」のお話し。
先日、下記のようなニュースが流れていた。
「サービス残業」を労働者にさせて、指導を受けた企業の数が、昨年1年間で1300社以上。未払い残業代は約100億円。
厚生労働省によると、2016年3月までの1年間に、従業員に残業代などを支払わない「サービス残業」で労働基準監督署から指導を受けて、100万円以上の未払い残業代を支払った企業は1348社。支払われた残業代の合計額は99億9423万円。未払いが多かったのは製造業や保健衛生業。厚労省は「指導を徹底してきたい」としている。
正直なことを申し上げると、「氷山の一角」である。というのが素直な意見である。日本には380ー400万社ほどの会社が存在しており、あくまでも表面化しているのが、1348社ということであり、肌感ではあるが、支払わない会社だけで考えると、10倍、いや100倍もしくはそれ以上あるのではなかろうか。
毎日2、3時間以上のサービス残業が当たり前となっていて、休日出勤、パワハラ、さらには不当解雇が平然と行われ、未払い残業代に付随した悩みを抱えた従業員が多いケースがほとんどです。
従業員の請求に対して、任意で支払う会社もあれば、労働審判、訴訟で和解し支払う会社もある。訴訟にて判決を取得しても払わない会社は払わない。挙げ句の果てに、会社を清算させてまでも支払わない会社もあります。
日本で働く多くの勤労者が、長時間労働に直面しており、実際の残業時間は「月平均50ー80時間、繁忙期は100ー130時間程度」働いているのではないかと思う。残業代が支払われているのは一部の企業だけであり、未払残業代が常態化し、支払いをしない企業が多すぎます。
「過重労働」が原因で自殺することが長年の問題となっており、「プレミアムフライデー(毎月最終金曜日は15時退社)」と呼ばれる制度が、来年2月から導入されるようだ。広告代理店最大手、電通の女性新入社員が月100時間以上の残業をして「過労自殺」した問題も新制度導入を後押ししている。
安倍晋三首相が議長を務める、「働き方改革実現会議」では、労働者の実態把握、不払い賃金をなくす工夫が必要と指摘している。長時間労働是正に向けて、労働基準法第36条に明記されているいわゆる「36協定」改定の議論会議を行うと同時に罰則を強化し、政府がしっかりと監督することが望ましいと思慮します。
「36協定=サブロク協定」とは
労働基準法第32条で定められている法定労働時間「1日8時間、週40時間」を超えて労働(本来であればこの限度を超えて労働させること自体が労働基準法違反となります)させるため、労働組合や労働者の過半数を代表する者との間で書面によって締結される協定を指します。
この合意についての定めが労働基準法第36条でなされていることから、36(サブロク)協定と呼びます。
労働基準法36条では、時間外・休日労働に関し、事業場の労働者の過半数を組織する労働組合(そのような組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)と使用者との間で、書面の協定を行った上で労基署長への届出がなされた場合には、例外的に時間外・休日労働が可能と定めています。
つまり、企業側が労働者の代表などと協定を結び、労働基準監督署に届け出れば、残業をさせてもよいとされています。
ただし、協定の締結さえすれば、無制限に労働させることが許されているわけではありません。36協定で定める延長時間は最も長い場合でも原則として、
「1週間・15時間」
「2週間・27時間」
「4週間・43時間」
「1か月間・45時間」
「2か月間・81時間」
「3か月間・120時間」
「1年間・360時間」とされています。
また、36協定を締結していても、残業代が免除されることはありませんので、しっかりと支払わなければなりません。
上記の限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情が生じることが予想される場合、「特別条項付協定」を結べば、限度時間を超える時間を延長時間とすることができます。
なお、所定労働時間が8時間に満たない事業場において、所定労働時間を超えて労働させた場合や、法定休日ではない休日に労働させた場合や週40時間、1日8時間を超えて労働させていない場合は、36協定の締結、労基署長への届出は必要とされていません。
36協定すら締結していないことは論外としても、形式的に締結しているだけでは全く意味がありません。特に、36協定を締結しただけで、その後の従業員の時間外労働、休日労働に対し守られていないことがあります。
結局のところ、「36協定」で残業時間に上限を設けても、事実上、無制限の残業を課すことができ、これが長時間労働の要因のひとつになり、サービス残業や未払い残業が増える可能性があると言えます。
最近は24時間営業の飲食店が増えてきており、無理なシフトを組んで勤務させたり、十分な休日を与えず、プライベートが全くないといった事案が少なくありません。飲食店も長時間労働が多い仕事となり、特に飲食店店長ともなると、経営者(オーナー)からの人件費削減、食材費削減、売上管理、原価率管理、新人教育、集客と指示が多く、疲労困憊しうんざりしているのではなかろうかと思う。
このような飲食店では、現場レベルで無理に人件費を削減してる影響から、結局業務に歪みが出ている飲食店が多く存在するのが事実でしょう。上記のことから「名ばかり管理職」もまだまだ「氷山の一角」であると感じます。
飲食店以外ですと、コンビニエンスストア、ホテル業、人材派遣業、介護職、出版業、製造業、自動車整備業、運送業界も長時間労働でお悩みの方が多いです。
証拠集めに苦労している方のご相談も増えてきてますが、当事務所ではご連絡いただければ適切なアドバイスをいたしております。労働時間を管理しているタイムカードをコピーできない、もしくは勤務データの持ち出しができない。というような方は、スマホ等で写真を撮り必ず残すようにしてください。そもそもタイムカードが存在しない、打刻ができる状況ではない、会社に提出し手元にない方でも相談を承ってます。
長谷川正太郎法律事務所では、残業代請求、不当解雇、その他会社とのトラブルについて精通した弁護士が対応しております。長時間労働、未払い残業代、労働問題に関して、少しでも多くの方の解決ができるよう来年もより一層充実したサービスを提供していく所存です。
本年も、皆様からの格別のご愛顧を賜り、心より御礼申し上げます。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。